Prelude to a Dream - Jackie Evancho / ジャッキー・エヴァンコ 幻のアルバムに付いた衝撃の値段とその内容は…

2010年にアメリカのゴット・タレントと言うオーディション番組で、世間を震撼させた天才少女がいる。

ジャクリーン・マリー・エヴァンコ(Jacqueline Marie Evancho)

アメリカのペンシルバニア州出身のクロスオーバー歌手兼女優、モデルとしても活動している、アメリカでは知名度の高いマルチタレント。

"ジャッキー"の愛称から、ジャッキー・エヴァンコ(Jackie Evancho)の名前で活動している。(当初は歌手活動を除く芸能活動はJacqueline Evanchoの本名を名乗っていたが、近年はJackie Evanchoに統一されている)

比較的最近では、トランプ大統領の就任式で国歌を歌った歌手としても話題になった。


2009年にラスベガスの大会で歌声を披露し優勝。

その後、デイヴィッド・フォスターのプロデュースで歌手としてデビューするが、この時点ではほとんどその名を知られていない。

それもそのはず。この当時、彼女は僅か8歳であった。


後に、前述したアメリカズ・ゴット・タレント2010にて、プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」より、O mio babbino caroを大人顔負けの歌唱力で歌い切り、一躍有名になる。

更に決勝まで進み、グノーのAve Mariaを歌って準優勝。

目を閉じれば、幼い子供が歌っているとは信じられない歌唱力と、その歌声からも「マリア・カラスの生まれ変わり」「天使の歌声」などと絶賛された。

ここからスターとしての階段を駆け上がって行く。


この年に"ファーストアルバム"となるO Holy Nightをリリースし、翌年には日本デビューに合わせて日本のテレビにも出演したので、国内でも一時的な話題となりCDもかなり売れた様である。

しかし、次のアルバムとなるDream With Meをリリースする頃には、そもそもクラシック系の需要が低い日本の市場からは飽きられ、メディアのごり押しも虚しく、その名を聞く事はほとんどなくなってしまった。

尚、海外ではその後も凄まじい人気を誇っており、日本との温度差は激しい印象である。


さて、そのジャッキー・エヴァンコだが、日本語版のWikipediaを覗けば分かる通り、前述したO Holy Nightがファーストアルバムとして記録されており、世間一般的にもそう認識されている。(2019年の暮れにWikipediaの情報が更新された様です)

しかし、実は2010年にリリースされたO Holy Nightは"セカンドアルバム"である。

ただ、誤認されるのには理由があり、公式でさえファーストアルバムの情報を一切公開していないし、本国でもあまり知られておらず、その存在は都市伝説とさえ噂されるアルバムなのだ。

その、幻のファーストアルバムがこちらである。


ジャッキー・エヴァンコの正真正銘のファーストアルバムとなる「Prelude to a Dream」だ。

この先のキャリアを予見したかの様に「夢の前奏曲」と銘打った、美しいタイトルのアルバム。


歌詞カードや凝ったリーフレットなどは一切付属せず、ご覧の通りジャケットの裏にプリントされた写真と、約半分の面積を占める紹介文が記載されているだけのシンプルなもの。

尚、左上に記載されている当時の公式サイトのURLは、現在は閉鎖されていて存在しない。


このアルバムはメジャーデビューする前の2009年に、彼女のファンクラブ会員向けに自費出版でリリースされたインディーズアルバムだ。

実は"曰く付き"のアルバムで、アメリカズ・ゴット・タレントで彼女が優勝できなかった原因になったとも言われているのだが、その理由は歌唱力にある。

彼女がゴット・タレントで歌ったのは、このアルバムのリリースから約1年後であり、天使の歌声とまで絶賛されているが、この放送で歌声を聴いた視聴者が、当時ストリーミング配信されていたAmazon.comのダウンロード販売の音源に飛び付いたらしい。

そして、大変ショックを受けたそうだ。

とは言っても、年齢を考慮すると十分上手いのだが、2010年時点の彼女の歌声が"あまりにも凄すぎて"ストリーミングの音源との差があり過ぎる事から、口パク疑惑が掛けられる騒動へと発展する。

この騒ぎを鎮めるために、彼女の両親がすぐに配信をストップし、このアルバムの存在を"無かった事"にしてしまったのである。

つまり、現在では公式が「そんなアルバムは存在しない」と言っていると捉えて良い。

尚、番組放送前の売り上げは0に等しく、その後注目されてから配信ストップまでのダウンロード数は約4000と記録されているが、物理CDとして世に出回った数は僅か100枚程度と推測(公式が無かった事にしているため正確に公表されていない)されており、彼女の現在のファンの数を考えると、その割り当ては砂浜に埋めた米粒を探すに等しい。

故に、幻のアルバムと言われているのである。

このアルバムはあまりにも数が少な過ぎて、ジャッキー・エヴァンコの人気が出てきた現在ではとんでもないプレミアが付いている。

デビュー間もなくして人気は急上昇しており、2012年に5000ドル、2014年には6300ドル、クラシック系の市場注目度が低い日本のAmazonでも50万円以上の値を付けた、クロスオーバーでは世界一高価と言われているCDだ。

そもそも値段以前に、見付ける事が極めて困難である。

もし運良く所有しているのであれば、彼女が順調にキャリアを積んで行く限り恐らく値が下がる事はないと思われるので、手放さずに大切に持っておく事をお勧めする。

さて、問題の内容だが…


トラック1からいきなり炸裂する名曲のレパートリー。

クロスオーバーの魅力は、カバーが多いジャンルである事からも、基本的に名曲しか収録されていない。

要は、歌唱力で良し悪しが決まる様なもので、歌手の実力が保証されていれば全て名盤と成り得る事だ。

ブリトニー・スピアーズEverytime、続いてマルティナ・マクブライドConcrete Angelなどの名曲バラードに始まり、後半には映画Quest for Camelotよりセリーヌ・ディオンの英語ソロVer.でThe Prayerアンドレア・ボチェッリCon Te Partiròなどが収録されている。

讃美歌Amazing Grace、オペラからO mio babbino caroやAve Mariaも収録されているが、ここが前述した曰く付きの部分であり、正直言ってThe PrayerCon Te Partiròも、この当時の彼女にはややレベルが高い印象も受ける。

後にリリースされているアルバムに収録されたものと聴き比べると、仕上がりが残念な印象は否めないので、正当な評価としてこのアルバムをお勧め出来るかと言われると、微妙なラインだ。

ただ、EverytimeConcrete Angelは、後のアルバムには収録されていないので、このアルバムでしか聴く事の出来ない貴重な音源だと言える。

以下に、ジャッキー・エヴァンコの公式チャンネルが公開している、デビュー間もない頃の1曲を参考にリンクしておきます。

Jackie Evancho - Concrete Angel (2009)
YouTube - Jackie Evancho公式チャンネルより


アーティスト:Jackie Evancho
タイトル:Prelude to a Dream

収録曲リスト
1.Everytime
2.Concrete Angel
3.Teaching Angels
4.Starry Starry Night
5.Think of Me
6.Memory
7.To Where You Are
8.River of Dreams
9.Dark Waltz
10.The Prayer
11.Amazing Grace
12.Ave Maria
13.O mio babbino caro
14.Con Te Partirò

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