From My Book of Melodies - Alma Deutscher / アルマ・デューツシャー NYカーネギー・ホール公演「Siren Sounds Waltz」

少し前に紹介した、イギリスの若き作曲家アルマ・デューツシャーですが、2019年12月12日に、予定通りカーネギー・ホールでの公演を行いました。

日本ではあまり話題にはなっていませんが、評判も良く、公演は大成功だっと言えるのではないでしょうか。

そこで、やはり気になるのは演目ですよね?

一体何を披露したのか。


こちら、アルマの2nd.アルバムとなるFrom My Book of Melodiesです。

2019年11月にリリースされた最新アルバムとなるわけですが、12月のカーネギー・ホール公演では、このアルバムの中から「Siren Sounds Waltz」が披露されています。

YouTubeのアルマ公式チャンネルから、当日の映像が公開されたので視聴する事が可能ですが、もちろんこれはアルマの作品。

アルマの演奏ではなく、あくまでもオーケストラによるアルマの作品の公開と言った形です。


Siren Sounds Waltzは、サイレンの音を表現したユニークなイントロから始まり、いくつかのワルツを経て戻ると言った感じ。

あまりクラシックでは聴く事の無い音の使い方で、アルマのセンスが感じられます。

純粋に、楽しいんだ!


クラシックって何が面白いんだ?って思う方もいるかもしれません。特に日本では。

中には、クラシックこそ繊細な音や豊かな表現力が織り込まれた、音楽と言う芸術の頂点にあるかの様に語るファンも多いですが、私はそうは思いません。

私もクラシックは大好きですよ?

ただね、オペラからヘヴィメタルまで幅広く聴き、単純に"音楽"として楽しむ私に言わせれば、クラシックだろうとポップスだろうと、民謡だろうと、単純に好きか嫌いかで良いと思うんですよ。

難しい解釈だとか、視聴マナーだとか、そんな堅苦しい事をクラシックに当て嵌めようとするからとっ付き難い印象を与えるし、聴く気も起きないって言うのが実際のところでしょう?

勘違いしている人も多いですが、クラシックって古い音楽ではないんですよ。

あくまでも使う楽器や奏法など、所謂ジャンルの話であって、実際アルマの音楽は新しいです。

また、大昔に作られた曲でも、現代の音楽家によって様々な解釈と表現で再現しようとする音楽は、当時の音とは異なるわけで、これもまた新しいと捉える事が出来るかもしれません。

ただ、モーツァルトやベートーヴェンだとか、音楽の授業でも名前が出てくる有名な音楽家は多数いますが、これらの作品が何をどう表現しているのかと言った、正確な解釈を作曲家本人から聞く手段はありません。

しかし、現代を生きる作曲家の話を聞く事は出来る。

その曲の正確な解釈を、作曲家本人から聞くチャンスのある時代に、その"オリジナル"の原曲を聴けると言うのは非常に恵まれていると言えます。

曲の持つ意味を理解した上で、それを頭の中でイメージしながら聴くと、ただ音を聴くのとはまた違った印象を受けるのではないでしょうか。


そうそう、知ってますか?クラシック通は認めたくない事実かもしれませんが、一流の音楽家の中でも本物の音を理解し、聴き分ける事が出来る人なんて稀です。

ヴィンテージワインの評論家で有名なロバート・パーカーも、現代で最も影響力のあるパーカーポイントと言う採点方式の欠陥を認め、こう言っています。

あくまでも、自分自身の好みで点数を決めているもので、100点だからと言って全員が高評価するとは限らない。

ヴィンテージと言う嗜好性のジャンルを好む者に対しての目安であり、むしろ、低評価した物や安価なフレッシュワインの方が万人受けすると言っている。

言い換えれば、芸術の頂点だと言えるクラシックミュージックより、ポップスやロックの人気が強い理由も、これと同じ事が言えるのではないか。

また、個人的な好みの話になるが、私はスタインウェイやベーゼンドルファーよりヤマハのピアノの音が好き。

もちろん、アップライトかグランドピアノかと言った違いや、側板のサイズや響板でも音の響き方は変わるし、ジャズやポップスなど、音楽のジャンルによってはどれが合っていると言った物もあるが、純粋に単体の音で聴いた際にはヤマハのピアノの音はクセが無く極めてクリアで、悪く言えば特徴がない。

それが故に、私はその音を美しいと感じる。

違いが分かるの?って疑問に思う方もいるかもしれませんが、素人の私でも違いが分かるくらいなので、嘘だと思ったらウン千万するピアノが並べてあるお店で、試しに鍵盤に触れてみると良いでしょう。(くれぐれも乱暴に扱わない様に)

買うと高いですが、試しに弾いてみる分には、なんと"タダ"です(笑)

リクエストすれば、お店の人が何か1曲弾いてくれたりするところもあるので、聴き比べるにはその方が理想ですがね。

ピアノを弾く人に言わせれば、面白味がない、音のぬくもりも感じられない機械的な音だと言う人もいるかもしれないが、なんだかんだでクラシックホールにも良く置かれていたりするので、良いピアノである事に違いはないし、その音を好む音楽家もいると言う事だ。

それに、良く聞く有名なピアノメーカー以外にも多くのメーカーは存在するし、日本のメーカーでもヤマハとカワイだけでなく、人気のあるメーカー、ややマニアックなメーカーなど多数あり、どれにもそれぞれの良さや特徴がある。

ピアノを弾かない、と言うより弾けない上に音感も備わっていない私が言うと説得力が微塵も感じられないかもしれないが、音楽家を集めてヴァイオリンのブラインドテストを行った有名な話がなかなか面白い。

ストラディバリウスなどをはじめとするヴィンテージの名器と、現在流通する量産品をいくつか集めて聴かせたり、弾かせたりと言うテストに於いて、ヴィンテージのヴァイオリンを正確に言い当てた音楽家は半数以下。

また、どれがストラディバリウスかと言う問いにも、自信を持って答えられた人は極僅か。

更には、どのヴァイオリンの音が好みか、または自分が弾きたいと思うヴァイオリンはどれかと言う問いに対して、半数以上が新しいヴァイオリンを選ぶと言うもの。

音が均一で、クリアだからだ。

つまりは、結局のところコンピュータなどで音の響き方などを正確に分析し、高精度で生産できる現代の楽器の方が、昔の名器をも超えていると言う事だ。

そして何より、結局のところ好みでしかないって事である。

この話を聞けば、高価な楽器の良さがよくわからないって思ってる人、クラシックってなんだか難しそうって思ってる人でも、ちょっと自信が湧いてくるでしょう?

好みで良いんですよ。

一見堅苦しそうなクラシックの名曲だって、鼻歌で口ずさんだって良いでしょう?

一流の奏者が奏でるピアノやヴァイオリンじゃなきゃダメだなんて誰が決めたんだ。

是非、自分の好きな一曲を見付けて欲しい。

クラシックに対するイメージが変わるはずですよ!

Siren Sounds Waltz by Alma Deutscher, Carnegie Hall, Dec 2019
YouTube - Alma Deutscher公式チャンネルより


アーティスト:Alma Deutscher
タイトル:From My Book of Meledies

収録曲リスト
1.For Antonia
2.The Lonely Pine-Tree
3.Summer in Mondsee
4.Up In The Sky
5.When The Day Falls Into Darkness
6.The Star of Hope
7.In Memoriam
8.The Chase
9.Sixty Minutes Polka
10.I Think of You
11-16.Siren Sounds Waltz

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